Ep.2 日本男児
むかーしむかし、とあるバーで知り合ったキックボクサーがいました。
その頃彼はバーテンさんで私はお客さん。丸めた頭には日本男児としての断固たる意思が込められており、容姿もそのままにひとたび武士道について語らせれば意気揚々と語りだすではありませんか。
おもっくそ右向きなその思考には思わず敬服してしまいます。
左利きのくせに。
彼が武士道や日本を語る上で「でも」や「けど」などの逆説を唱えようものなら文字通り一蹴されてしまうでしょう。
左足で。
そんな彼が残りの人生を賭けてバーテンを辞め、キックボクシング界に身を投じたのは3年ほど前の事だったでしょうか。その翌年NJKFスーパーライト級王者になりました。
そしてこの度ISKAムエタイ・インターコンチネンタル ライトウェルター級のチャンピオンになりました。パチパチー
長くて噛みそうなこのタイトルがどれくらいすごいものなのか私には分かりかねますが、相手はスペインから来ていた事、メインイベントだったこと、勝って喜んでいる顔から察するに初孫が出来たくらいのものでしょうか。
子どもすらいないので知りませんが。
何しろどの世界でもチャンピオンは凄い。なんといっても一番ですよ。
一番になった人の顔を生で見れる機会は人生にそう何度もありません。
また落ち着いたら出会ったバーで一献傾けたいなぁ。
左利きの右向きな思考を肴に。